Speaker
和樹 西田
(東京理科大学)
Description
我々はGEMと針葉樹型カーボンナノ構造体 (Coniferous Carbon Nano Structure;CCNS)を組み合わせてコンパクトな変調型X線発生装置(Modulated X-ray Source;MXS)を開発した。これはMPGDとはいえないが、MPGDデバイスのひとつの応用として開発状況を紹介する。
X線発生装置は科学や工業など様々な分野で利 用される。一般的にX線は電子を加速し、ターゲット金属にぶつけることで発生させられる。X線発生装置の電子源としては熱電子を利用 するフィラメントがよく用いられてきた。近年、カーボンナノチューブ(CNT)など、電子電界放出を利用した電子源も使われている。
我々はCCNSを電子源として用いている。CCNSはCNT、カーボンナノウォール、カーボンナノダイヤモンドなどのナノメートルオーダーの炭素構造体が 複合的に針葉樹状を形成している。CNT単体に比べて根本が太いため、静電気力やイオンの衝突などで破損しにくい。CCNSを$10~$kV/cm以上の電場中におくと電子電界放出によって電子を放出する。このCCNSにGEMを被せて電子引き出しのゲートとする。GEMは厚さが$100~$μm以下と薄いので、GEMに~$100~$Vの電圧を加えるだけで、CCNSから電子が引き出される。引き出した電子をターゲット金属に電場によって加速してぶつけることで、特性X線と制動放射を 得る。このとき、GEMに印加する~$100~$Vのゲート電圧を$1~$μs未満でON/OFFすると、それに同期して高速でX線の発生をON/OFFできる。MXSはX線発生の瞬間(GEMに印加する電圧)をトリガーとして つかえるので、Time Projection Chamber など様々な実験装置の較正に利用できる。
実際にMXSをTiをターゲット金属として製作し、動作実証を行った。その結果、期待したとおりに~$100~$Vの印加でX線を発生させることができた。X線フラックスは$100~$Vの印加で$5.5 \times 10^7~$count/s/srであった。CCNSから引き出される電子量(X線フラックスに直結する)は、印加電圧の二乗に比例して増 加し、$300~$Vの印加では最大で$140~$μAの電流がCCNSから引き出された。また、MOS-FETをつかった簡単なハーフブリッジ回路によって$600~$nsの幅のゲート電圧をGEMに印加することで、それに同期したX線を発生させることに成功した。本講演では、実際に製作したMXSでのX線フラックス、タイミング特性、安定性を示し、今後の開発予定や応用について提案する。
Primary author
和樹 西田
(東京理科大学)